この十年の間に、食事に限らず、一人きりでもできるようになったことが増えた。 以前は「一人ではちょっと・・・」と思っていたこと、例えばコンサートやお芝居や 旅行も一人で楽しく行けるようになった。

一人では行けないと思っていた頃は、行動する前にまず一緒に行ってくれる人を 探さなくてはならなくて、それが見つからないと諦めてしまったりしていた。 それは一人では不安という気持ちよりも「一人でいたらおかしいのでは」という 他人の目を気にしたものだった。 友達も恋人もいない人なんだと思われるのが恥ずかしいと、 どこかで思っていたのだ。

いつの間にか他人がどういう目で見ようと、別にいいやと思うようになってきた。 だいたい人は自分が思うほど、他人のことなんか気にしちゃいないのだ。 意味の無い見栄をはって、やりたいことを諦めるのはバカバカしい。 そんなふうに思うようになったのは、 一人きりでいる時間が長くなったせいかもしれない。

-山本文緒「そして私は一人になった」より-